「森万里子:燦燦」が、東京・六本木の森美術館で10月31日に開幕した。会期は2027年3月28日まで。
本展は、現代美術家・森万里子(1967〜)の30年以上にわたる活動を、約40点の作品を通じて紹介する大規模個展。日本では2002年に東京都現代美術館で開催された「森万里子 ピュアランド」以来、24年ぶりとなる。初期の写真や映像から、CGや脳波を用いたインタラクティブ・インスタレーション、古代文明や自然信仰に着想を得た立体作品、近年のパブリックアート・プロジェクトまで、その多様な実践をたどる。
キュレーションを手がけたのは、森美術館館長の片岡真実と、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館・財団のシニア・キュレーター・アット・ラージ、アレクサンドラ・モンロー。展覧会は「スター誕生」「つながる世界」「太古の記憶」「自然とひとつに」の4つのセクションで構成される。

開幕に先立つ記者発表会で、片岡は、世界各地で分断が進む現在、アートや美術館が果たせる役割を考えるうえで、森の実践を振り返る意義を強調した。いっぽう、モンローは森の表現を「メタフィジカル・ポップ」と位置づけ、ポップカルチャー、テクノロジー、科学、精神性を横断してきた活動を現代美術史のなかで再評価する展覧会だと説明した。
タイトルの「燦燦」は、森の作品に繰り返し現れる「光」を象徴する言葉だ。会場では、曲線を描く白い壁や柔らかな照明、池田謙による電子音楽などを通じて、個々の作品がひとつの大きな空間体験として結びつけられている。
サイボーグから仏教的宇宙観へ
1967年に東京で生まれた森は、ファッションデザインを学んだ後、ロンドンやニューヨークで美術を学び、90年代半ばから国際的な注目を集めるようになった。
展示の出発点となるのが、初期の「サイボーグ」シリーズだ。《プレイ・ウィズ・ミー》(1994)や《サブウェイ》(1994)では、森自身がデザインした未来的な衣装を身につけ、都市の日常空間に登場する。アニメやSF、コスプレなどの大衆文化を取り入れた鮮やかなイメージの背後には、当時の日本社会における女性の表象や消費に対する批評的な視点がある。

1995年に資生堂ギャラリーで開催された日本初個展に出品された《スター誕生》も、その代表例だ。ピンク色の髪をした未来的なアイドルの姿に扮した森は、光や音、デジタル技術を組み合わせ、人間と人工物の境界が曖昧になるような存在をつくり出した。
その後、森の関心は、仏教的な死生観や宇宙観へと広がっていく。初期の映像作品《巫女の祈り》(1996)や《熊野》(1997)では、未来的な衣装や映像表現を通じて、日本の宗教文化や精神性を独自の方法で捉え直した。

「エソテリック・コスモス(宇宙の秘儀)」シリーズ(1996-98)では、死海やアリゾナの砂漠など世界各地で撮影した風景にCGを重ね、仏教の図像を参照した幻想的な世界を構築している。代表作《ピュアランド(浄土)》では、森自身が神格化された存在として画面に登場し、周囲には雲中供養菩薩を思わせる人物たちが浮遊する。

1997年のヴェネチア・ビエンナーレで特別賞を受賞した《ニルヴァーナ》も、こうした探究を象徴する作品だ。3D映像によって仏教的な浄土のイメージを立体的に体験させるだけでなく、風や香りも取り入れることで、鑑賞者の複数の感覚に働きかける。
片岡は、森が1990年代から最新の技術を積極的に取り入れながら、「平面作品にとどまらない空間的な体験を追求してきた」と指摘する。華やかなデジタル・イメージと精神的な世界への関心は、森の初期作品からすでに共存していたことがわかる。




































