失われる土地と、循環する生命
植物や土をめぐる表現は、地域社会の変容や、人間によって改変されてきた環境の問題へとつながっていく。
三重県伊賀市の島ヶ原を拠点とする岩名泰岳は、人口減少や耕作放棄地の増加、空き家の倒壊など、故郷の風景が変わっていく過程を絵画にしてきた。会場に並ぶ絵画やドローイングには、かつて人が暮らしていた家の柱や道端の石仏、墓石など、土地に残された痕跡が描かれる。

《浄土》(2026)は、都市から運ばれた生ごみを発酵させ、堆肥に変える施設での経験をもとに制作された。失われるものをたんなる消滅としてではなく、分解や発酵を経て別のものへと変化する循環のなかで捉えようとしている。
加藤美佳の作品にも、廃棄物から新たなものを生み出す視点が見られる。2006年に制作活動を中断し、24年に新たな作品群を発表した加藤は、家庭から出る生ごみや廃材を素材として使用。本展では、戦争によって荒廃した世界に取り残された子供が、身近にあるものを使って遊び道具や居場所をつくるという想像から生まれたインスタレーションを展示する。

保良雄は、福島をはじめとする各地でのフィールドワークを通じて、人間と土地、物質との関係を探ってきた。本展では、メントールを多く採取するために品種改良されてきたハッカに着目する。
ハッカは自然に存在する植物であると同時に、人間の生産活動によって形質を変えられてきた存在でもある。また、北海道から運んだ土のブロックの上にガラスを敷き、複数のオブジェクトを配置した展示空間では、入室を制限することで、福島第一原発事故後の帰還困難区域と、一時帰宅という状況を想起させる。植物の品種改良という問題から、土地へのアクセスや、そこに暮らしてきた人々と環境との関係へと問いが広がっていく。




















