「地面」を取り去る、新たなモビール
展覧会後半で大きな見どころとなるのが、本展で初公開されるモビールの新シリーズだ。最大約3.5メートルにおよぶ作品群が、高い天井から宙吊りにされている。
平子がここで着目したのは、人間と植物の双方が「大地に依存している」という共通点だった。そこであえて両者の足元から地面を取り去り、宙に浮かせることで、人間と自然の関係をいったんフラットな状態から考え直せないか試みたという。

地面に置かれた彫刻が持つ重力や垂直性から解放された作品は、窓の外に広がる都市の風景と重なり合う。会場が6階にあり、時間帯によって自然光が変化していくことも作品の一部として作用する。平子がつくり出した植物、人、物体が宙を漂い、その奥に現実の日比谷の街が見えることで、鑑賞者はいったん絵画的な空想世界へ入り込みながら、最後には再び現実の都市へと送り出される。

こうした構成について秋元は、平子の作品には物語を想像させる人物やモチーフが多数登場するいっぽうで、明確な起承転結を持つ物語が設定されているわけではないと語る。鑑賞者は色やかたち、モチーフ同士の関係を自由に「読み」、そこからそれぞれの風景をつくることができる。
平子自身も、「現時点でできる最高の展示ができた」としながら、鑑賞者に特定の答えを求めてはいない。作品から何かを発見するのか、これまで感じたことのない感情を持ち帰るのか。それぞれの経験に委ねたいという。
都市と自然の境界が交差する日比谷という場所で、平子の作品は、私たちが「自然」と呼んでいるものをあらためて見つめ直すきっかけを投げかけている。


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