平子雄一キュレーションする初のグループ展。「In search of others」がKOTARO NUKAGAで開催へ
「他者」として存在するヒトをテーマに、アーティストの平子雄一がキュレーションを担う初の展覧会が、東京・天王洲のKOTARO NUKAGAで開催される。会期は5月14日〜6月25日。
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東京・天王洲のKOTARO NUKAGAで、「他者」として存在するヒトをテーマとするグループ展「In search of others」が開催される。キュレーションはアーティストの平子雄一。参加作家は平子のほか、伊佐治雄悟、王冠蓁、熊野海、高橋直宏、陳雲、寺本明志の計7名。会期は5月14日~6月25日。
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「In search of」は「〜を探し求めて」と訳される。その先にある「others」はたんに「他人」に置き換えるよりむしろ本展のテーマ、「他者」として存在するヒトを当てるべきだろう。本展には、参加アーティストが作品それ自体、あるいは作品の中に生み出した様々な「他者」があふれている。
本展には、参加アーティストが作品それ自体、あるいは作品の中に生み出した様々な「他者」があふれている。
伊佐治雄悟は、主に可塑性のあるプラスティック製品を用いて人間の顔のようなモデルなどのファウンド・オブジェを制作。作品を通して、一見無機質な日用品に内在する生命感への気づきをもたらす。
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王冠蓁はペインティングと陶器の手法を用いて、切り取った身体を模した陶器無邪気さと奇妙性さを併せ持つ人物像を制作。感情があふれた人間と「非個性」な器物の境界に迫る作品となっている。
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熊野海は、鮮やかな色彩を用いて壮大な光景を映す作品を展開する。煙があふれた現代社会の闇と混沌。そこで生きる人間の社会を描く。
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高橋直宏の制作は、主に人体の木彫だ。断片的に繋がれた糸繰り人形のような、部位を不自然に組まれた異形は、物理的な制約の下に人間をどう考察していくか鑑賞者に問いかける。
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陳雲は「記憶の具現化」をテーマに、2~3枚のパネルを組み合わせるモンタージュ的手法を用いた作品を展示。抽象と具象を同時に提示することで、日常的に目にするモダンスタイルの人物を、リリカルな映画を思わせるシーンに浮かび上がらせている。
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can slowly fade away like the gradual change of shadows 2021
寺本明志は、日常のモチーフを異なる空間に配置した構図の絵画作品を制作。現れる非日常の景色は、鑑賞者が自然態と違和感を往復し、我々が生きる環境において人間を含むさまざまな要素の関係性の再考を促す。
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本展のキュレーションを担う平子は、ロンドン留学時に「自然の良し悪しを選別し人工的に植物世界をつくり、それに満足をする」人間に違和感を抱いてから、近代以降続く自然と人間との間の主客二元論的関係への問題意識に基づいて制作を行ってきた。
生み出したのは、頭部が樹木の形をした人型の登場人物。この「他者」を介して、鑑賞者の意識を自然との関係性へ誘う。彼が描き出す「他者」は声を発して何かを語ることはない。しかし、「他者」から何かを読み取ろうとする姿勢や意識こそ重要だという。
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自然との間に線引きして「自己」を認識してきた私たち人間は、客体を従属させるようにして距離をとってはいなかったか。「他者」の声が聞こえなくなってはいないだろうか。本展は他者を探し、出会い、耳を傾けるきっかけを与えてくれる場となるだろう。