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「暗闇をくぐってみたら Part2 笹岡由梨子展『渦巻』」(市原湖畔美術館)開幕レポート。ユーモアと不穏さが立ち上げるもうひとつの地域史【2/2ページ】

「水中彫刻公園」に触発されたインスタレーション

 続く会場では、加藤による記録写真の一部が展示されている。顔ハメパネルの穴となっていた村人たちの顔が、記録写真を通じて実際に目の前に立ち現れる。地下の展示室からは、先の作品とは異なる声色の歌が流れており、覗き込むとそこにはもうひとつの作品《渦巻》(2026)が展開されている。本作は、同館の前身である「市原市水と彫刻の丘」の構想のもととなった「水中彫刻公園」に触発されたインスタレーションだ。

加藤清市による記録写真群
三好敏弘による「水上彫刻公演」構想図

 三好によって構想された「水中彫刻公園」は、様々な色を用いたカラフルな構造物で、笹岡曰く「バブリーさ(バブル風)」を感じさせるデザインだ。その構造物を模した立体の上部には、顔ハメパネルのようにくり抜かれた縁があり、そのなかに笹岡自身が村人を演じた映像が映し出されている。地下の展示室に降りて作品に接近すると、その笹岡が演じる顔は、水面から浮き上がってきているものだとわかる。実際に笹岡が水に顔を浮かべながら撮影したという映像には、自身で作詞作曲した歌のほかに水音も混ざり、まさにいま、この湖のなかから顔が浮かび上がってきているようにも見える。

笹岡由梨子《渦巻》(2026)ビデオ・インスタレーション 6分15秒
笹岡由梨子《渦巻》(2026)ビデオ・インスタレーション 6分15秒

 ユーモアと底知れない不穏さを同居させる笹岡の作品は、身体的・空間的な表現を通じて、忘却されつつある地域史を立体的に立ちあげていると言えるだろう。なお、会期中の8月1日には、笹岡自身によるトークイベントのほか、加藤と三好を招いたトークセッション「湖の底に、あった世界、ありえたかもしれない世界」も開催されるため、こちらも合わせて注目したい。

編集部