リサーチ資料の展示やデヴィッド・ボウイとの共作も
《計り知れないもの》(2015-16)は、空間に幽霊や立体的な幻影が浮かび上がっているように見せる19世紀の光学的なイリュージョン技術「ペッパーズ・ゴースト」を用いながら、アーサー・コナン・ドイル、ハリー・フーディーニ、霊媒師マージョリー・クランドン、そしてアウスラー自身の祖父チャールズ・フルトン・アウスラーら実在の人物をめぐる物語を描く。本展では作品とともに、心霊写真や手品道具、書簡など、アウスラーが長年収集してきたリサーチ資料の一部も展示。椿は、「作品だけでなく資料もあわせて見ることで、この物語をより立体的に理解することができます」と紹介した。


さらに、本展ではデヴィッド・ボウイ(1947〜2016)とグレン・ブランカ(1948〜2018)との共同プロジェクト《空(くう)》(2000)を世界初公開。1999〜2000年に構想されたものの未完成だった作品が、本展を機に初めてインスタレーションとして結実した。高さ約2.5メートルのモノリス状の立体にボウイの顔が投影され、映像、音楽、詩が重層的に交差する空間が立ち上がる。

展覧会の最後を飾る《キメラ》(2026)は、本展のために制作された大型新作だ。TOKYO NODEの高さ約15メートルのドーム空間を生かし、植物や水辺、未知の生命体が漂うデジタルガーデンを構築。ネット上の噂や都市伝説、UMA(未確認動物)などをもとに生成されたキメラたちが現れ、人間の想像力とテクノロジーが交差する新たな生態系を描き出す。椿は、「AIやデジタル技術が急速に発展するいま、『キメラ』とは何なのかという問いを観客へ投げかける作品」と語った。

映像をスクリーンから解放し、人間の知覚や信念のあり方を問い続けてきたアウスラー。その40年以上にわたる実践を振り返る本展は、AIや生成メディアが急速に浸透する現代において、「見ること」「信じること」「創造すること」の意味をあらためて考える機会となるだろう。



















