《果蔬図巻》と《菜蟲譜》の初並置
本展の中核を成すのは、2階のギャラリー2で展開される《果蔬図巻》と《菜蟲譜》の比較展示だ。《果蔬図巻》は約3メートルの絹本に約50種の果物と野菜が描かれた作品で、長らく所在不明とされてきた。2023年にベルギーで発見され、約1年間におよぶ修復を経て本展で公開されている。巻物の末尾には、相国寺の僧侶・梅荘顕常(ばいそうけんじょう/大典)による跋文(ばつぶん)も添えられた。

いっぽう、栃木の佐野市立吉澤記念美術館に収蔵されている《菜蟲譜》は全長約10メートルにおよぶ大作で、野菜や果物に加え、昆虫や蝶、爬虫類など約160種が描かれている重要文化財だ。同作が関西で公開されるのは2018年以来、約8年ぶりとなる。



両作品はこれまで個別に語られることが多かったが、本展では初めて並置され、構成やモチーフ、技法の差異を比較しながら鑑賞することが可能となった。岡田によれば、《果蔬図巻》にはレンコンを除き根菜類やキノコ類がほとんど見られないのに対し、《菜蟲譜》では山芋などの根菜や菌類が加えられ、さらに後半には昆虫が描かれるなど、主題が大きく拡張されている。すなわち《菜蟲譜》は、《果蔬図巻》を基盤としつつ内容を発展させた作品であり、両者は「姉妹作」とも呼びうる関係にある。


また、《菜蟲譜》は文化財保護の観点から通期展示ではなく、前期冒頭(4月25日~5月8日)と後期終盤(6月20日~7月5日)の限られた期間にのみ公開される。そのため、《果蔬図巻》と同時に鑑賞できる機会は極めて限られており、本展の大きな見どころとなっている。
その中間期間(5月9日~6月19日)には、近年その存在が確認された、野菜や果物によって涅槃図を構成した《果蔬涅槃図》(1792以前)が展示されるなど、展示替えを通じて若冲の晩年の多様な試みも紹介される。



















