緑の部屋
階段を上がると、「緑の部屋」と呼ばれる鮮やかな緑色で塗られた2つの空間につながる。ここは子供部屋などに使われていた。壁の色が目を引くが、備え付けの棚の造形も印象的だ。独特の形状をした引き戸などに、実用性を超えた美学を追求した痕跡を見ることができる。


最上階は、白に彩られた屋根の下に広がる空間だ。階下の「緑の部屋」と同様、壁一面に特徴的な棚が備わっている。竣工当初この部屋は青色に塗られていたが、のちに志郎康の妻の意向で白く塗り替えられたという。現在は自然光の映える明るい空間だが、かつての青い壁面がつくり出していた光景は、いまとはまったく異なる様子であったに違いない。壁の一部には、塗りきれなかった下地の青がわずかに残されている。
志郎康の息子・鈴木野々歩は次のように語る。「空間の上部に設けられた窓から、冬の朝だけ太陽の光が真四角に差し込む。ここに住んでいるときは知らなかったが、住人がいなくなって見学するいま、初めて気がついた」。住んでいるときには気づかなかった光に、住人がいなくなったいま初めて気づいたという。「住宅は芸術である」という信念のもと建築を手がけた篠原は、人が住むことによってそれは完成された作品ではなくなると考えた。窓から差す光への気づきは、「住む」者がいなくなった建物が、改めて篠原のいう芸術作品に戻っていく兆しのひとつなのかもしれない。






















