さらに、館内でもっとも広い中央展示スペースには、絵本の世界を体感できる空間が広がる。壁面には「旅の絵本」シリーズや『野の花と小人たち』から厳選された8つの場面が大きくプリントされ、まるで絵本の世界に入り込んでいるかのような体験ができる。囲いには様々な形の窓が開けられており、上空から覗き込むような視点で鑑賞できる仕掛けもユニークだ。


ほかにも、安野が描いてきた「風景」や「歴史」といった普遍的なテーマを再構成した「絵画館」と称する空間も登場。ここでは、シェイクスピア作品をはじめ、『三國志』『平家物語』などの歴史画、世界各国の風景画までが幅広く紹介されている。空間の密度や色彩、モチーフの静と動の関係など、あらゆる点において完成度の高い作品群は非常に見応えがあった。


「ぼくはなんでも描いてきた」。生前そう語ったという安野は、自身が自己表現に重きをおく「画家」ではなく、なんでも描く「絵描き」であると自認していた。制限をつけず、創作の幅を広げてきたその自由で旺盛な好奇心は、現代を生きる私たちの想像力を刺激し続けてくれる。




















