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「開館40周年記念 路傍小芸術」(新潟市美術館)開幕レポート。いつもそばにあったものを憶えていたい【3/5ページ】

 本展では藤井により3人の画家がピックアップされているが、そのいずれの人物も謎が多い。飯田春行(1933〜2022)は教職を辞して絵画に没頭するようになった画家だが、その一見抽象画と思われる作品はアスファルトのひび割れた白線など、路上のものを徹底的に観察することで描かれていたことが死後に見つかった資料から判明した。

展示風景より、飯田春行の作品

 井上霞舟(生年不詳〜1967)は東京で絵画を学んでいたものの、家庭の事情で故郷に帰らざるを得なくなり、文具店を営む傍ら、風景や花鳥を画題にか油彩や絹本彩色で絵を描いた人物だという。2代目が経営していたこの文具店に貼られていた「だるまの絵」と藤井が出会ったことから、その知られざる画業が本展で取り上げられることになった。発表の機会を求めず、近隣に絵を贈呈する程度だったというが、そのような広く目に触れなかったが確実に存在した「画家」について作品は静かに語る。

展示風景より、井上霞舟の作品群

 高橋一平(1952〜)は十日町生まれ、専門的な美術教育を受けていないものの、父方の祖父母が暮らしていた茅葺きの家を懐かしみながら何度も描いてきた。その絵は引き裂くような色鉛筆のストロークと複雑な彩色で描かれており、また広角レンズで覗いたかのように家は湾曲しせり出してきている。藤井いわく「サイ・トゥオンブリの領域に、自ら目指すことなくたどり着いている」という本作の迫力は、ぜひ実物を見て感じてもらいたい。

展示風景より、高橋一平の作品

編集部