最後となる第5章「同時代芸術家との交流」では、中村と交流した芸術家たちを豊富な資料とともに紹介する。
本章では澁澤龍彦、稲垣足穂、瀧口修造、立石紘一(タイガー立石)、土方巽、芦川羊子らとの交流や影響関係を知ることができるが、改めて意識したいのはその横断性だ。分化と専門化が進み、他ジャンルとの協業が「コラボレーション」の名のもとに宣伝される現在とは異なり、20世紀後半の芸術の現場は、純粋な興味や関心によって多岐にわたる表現者が同じ運動体として活動し、また分離することで大きな力を生み出していたことがよくわかる。中村もまたこの運動体のなかのひとりであったことを意識しながら、各資料を楽しんでほしい。

中村の画業は、初期の社会変革運動の挫折によって「セーラー服」や「蒸気機関車」といった通俗的でフェティッシュな記号、あるいは絵画のなかで絵画を問う自己言及的な作風に「転向」したものとして評価することも可能だろう。しかし本展を通して見ると、中村の絵画には価値転倒への飽くなき欲求が通底しており、むしろ具体的な運動から「転向」的に絵画そのものへと拘泥することで、その強度を高めていったとも感じられる。「アナクロニズム(時代錯誤)」な表現を深く追求するからこそ生まれる鑑賞者との交歓と、来たるべき運動の予感。中村の絵画に宿り続ける変革への欲求を感じられる本展は、作家の再評価にふさわしい歴史的な回顧展といえるだろう。



















