谷中佑輔(金島隆弘賞)
続いては、金島隆弘賞を受賞した谷中佑輔。展覧会や舞台公演を横断しながら、身体の脆弱性をテーマにした作品を発表している。展示ではガラス、ブロンズ、金属で構成された彫刻作品が並び、中央には3人で演奏することを前提とした楽器作品が設置されている。一見すると異なる文脈の作品が並んでいるように見えるが、谷中の関心は一貫している。

「身体を生産性や機能で価値づけるのではなく、ただ『共にある』身体から連帯の可能性を探れないか。癒しやケアはその入口になりうる」と谷中は語る。
金島は、谷中の作品がファイナリストのなかでも「もっとも完成形がイメージしにくいもの」だったと振り返る。本アワードでは制作前の作品プランで審査が行われるため、審査員は完成形を想像しながら評価を行うが、谷中の提案は予測困難だったという。それでも金島は「自身の身体を基点に社会のシステムに挑もうとする姿勢と、制作への固執が、彫刻をより魅力的な造形に導いている」と高く評した。

黒田大スケ(寺瀬由紀賞)
寺瀬由紀賞を受賞した黒田大スケは、彫刻家についてリサーチし、対象を即興的に演じるビデオ作品を発表している。今回は戦後日本における抽象彫刻の黎明期に焦点を当て、多くの彫刻家に参照されたブランクーシとその代表作である「空間の鳥」の解釈をめぐる彫刻家たちによる議論を演じた。
「戦後の傷跡というイメージだけでは説明できない作家がいる。今回は歴史で語られず、忘れ去られたものを掘り起こし、作品にしている」と黒田は説明を加える。

寺瀬は「黒田の作品は歴史に埋もれた存在を丹念なリサーチで蘇らせ、美術的な知識を強要せずとも引き込む力を持つ。歴史的事実に基づいたノンフィクショナルなコミカルフィクションという独自の語り口を確立している」と評した。

小林勇輝(鷲田めるろ賞)
鷲田めるろ賞を受賞した小林勇輝は、中国南部の武術「詠春拳」を起点とした学際的パフォーマンス作品を展開。詠春拳は約300年以上前に少林寺の女性僧侶・拳法家によって創始され、国共内戦と日中戦争により佛山から香港に亡命した祖師「葉問」とその弟子たちによって世界に広まった。小林は2019年以降、香港・中国・日本にて鍛錬やリサーチ、交流を重ねてきたという。壁面には映像や資料が展示され、小林は会期中、毎日この場所で公開稽古を行う。

「なぜいま、戦いというものをこれほど強くイメージするのか。この武術を通じて、戦いに対する定義を再検討することが現代に何をもたらすのか。これからも学び続けていきたい」と小林は語る。

鷲田は「武術は一般的に男性性と結びつきやすいが、小林は女性によって創始されたと言われる詠春拳を身体的に学び、クィアの視点から武術を男性性から解放し、身体的なコミュニケーションの術として再解釈を試みている」とコメントした。

5組のファイナリストに共通するのは、数年から十数年をかけた長期的なリサーチと実践への姿勢だ。それぞれが深めてきた探求が、この場所でひとつの形となって現れている。
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