小袖
小袖類は、第2、5、7巻に約40件が掲載される。出版前の大正7(1918)年の展覧会で嘉一郎は6件を出品し、このうち2件が選ばれて7巻に収容された。当時の根津家の小袖コレクションは15件。4割が出品されたものの、掲載件数に物足りなさを感じたのか、その後、嘉一郎は、昭和9~10(1934~35)年に50件以上の小袖類を購入するなど、本格的な蒐集に乗り出したようだ。


ここでは、もうひとりの蒐集家・野村正治郎にも注目したい。古美術商を営み、早くから日本の染織の価値を見いだして質の高いコレクションを形成、同時にその魅力を国内外に伝えて、世界的にも知られる野村の旧蔵品は、戦後、紆余曲折を経てアメリカから買い戻され、現在は国立歴史民俗博物館にまとまって収蔵されている。

見事な婚礼装束は本来、白地、紅地とともに黒地の3領揃いと思われるが、現存は2領。ただし、この着物を写したと考えらえる作品の図案が『綾錦』に掲載されており、往時をしのぶことができる。




















