東京・青山にある根津美術館で、大正時代の京都・西陣で行われた「織物に関連する名品秘宝」の展覧会に端を発し出版された図案集『綾錦(あやにしき)』を紐解きながら、同館の染織コレクションを紹介する企画展「綾錦 -近代西陣が認めた染織の美-」が開催される。会期は12月20日〜2026年2月1日。
大正天皇即位の記念事業の一環として新築された西陣織物館(現・京都市考古資料館)では、大正4年(1915)から約10年間にわたり、古今東西の「織物に関係ある名品秘宝」を借用し陳列する展覧会が開催された。京都周辺の名刹のほか、当時の染織コレクターから借り受けられた染織品は、4ヶ月ごとにテーマを変えて陳列され、好評を博したという。
そんななか、主催者の間で展覧会開催のために苦労して集めた貴重な染織品を記録したいとの考えが起こり、とくに優れた作品が選定され、版画とコロタイプで意匠を再現した染織図案集が企図・発刊された。それが『綾錦』である。
本書には、出品者として同館コレクションの基礎を築いた実業家・初代 根津嘉一郎(1860~1940)の名を数多く見出すことができる。大正期に初代嘉一郎が染織品のコレクターとして知られた人物であったことだけでなく、掲載図案により、どのような染織品を所蔵していたかもわかる貴重な資料だ。
本展では、『綾錦』に掲載された初代嘉一郎の所蔵品のうち、現在確認できる20点が展覧される。染織コレクターとしての初代嘉一郎の新たな一面を垣間見るとともに、近代の西陣で認められた初代嘉一郎の染織コレクションの粋を楽しむことができる。




また本展では、同館所蔵品のほかにも、染織コレクターとして知られた野村正治郎旧蔵の「振袖 綸子地御簾檜扇模様」も展示される。さらに『綾錦』から一部の展示作品の掲載ページを見られる貴重な機会となっている。
なお、関連イベントとして担当学芸員によるスライドレクチャーも開催される。また同時期には、同館内の展示室5で「呉州手(ごすで) ー吉祥の器ー」、展示室6で「初釜 -新春を寿ぐ-」も開催されるため、そちらも要注目だ。

























