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企画展「綾錦 ―近代西陣が認めた染織の美―」(根津美術館)レポート。染織図案集『綾錦』からたどる、根津嘉一郎の隠れた染織コレクション【2/4ページ】

能装束

 能装束は、第2巻に5件、第6巻に22件が掲載され、6巻の19件(うち、3件は所在不明)が嘉一郎の所蔵品で、掲載全体の7割にあたる。大正6~7(1917~18)年までの展覧会に嘉一郎が出品した作品が25件というから、出品作の約8割が掲載されたことになる。いかに嘉一郎の染織品の鑑識眼が優れていたかが感じられる。

能装束の展示は衣桁(いこう)にも注目
『綾錦』の図案模写の版画。左は《縫箔 白地青海波に扇面散模様》から、右は《縫箔 紅浅葱段枝垂桜尾長鳥模様》から。驚嘆の再現力

 刺繍と金銀箔を組み合わせた「縫箔(ぬいはく)」、綾織地に金銀糸や色糸で模様を刺繍のように立体的に織り出す最高級の織物の「唐織(からおり)」、表着(うわぎ)の下に着用する「厚板(あついた)」、それぞれの技法のすばらしさと、意匠により着用する演目や役割などを思いながらたどってみたい。

能装束の展示。豪華で手の込んだ唐織は圧巻
手前は《厚板 紅格子段毘沙門亀甲に波輪龍模様》(江戸~明治時代・19世紀、根津美術館)。毘沙門天の甲冑に描かれた模様が由来の吉祥文様に有翼の龍が描かれる珍しい一作

編集部