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「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」(ヒカリエホール)開幕レポート【3/3ページ】

 暗闇のなかに浮かび上がる様々な椅子の造形に目が奪われるチャプター3には、ウェグナーの名作椅子25脚と各図面が並ぶ。家具メーカー「PPモブラー社」の創業者/職人で、ウェグナーの盟友でもあるアイナー・ペダーセンは、彼について「一枚の図面に一脚の椅子全体を描き、しかも図面から直接に椅子が製作できるようにすべての説明をそこに描き込める、数少ない人物である」と評しているほどだ。360度どこからみても美しい造形が生み出される理由は、実物と図面をあわせて見ることで理解できるだろう。続く暗室で公開されているウェグナーのインタビュー映像とあわせて、デザインに対するその信念を目の当たりにしてほしい。

展示風景より
展示風景より

 チャプター4では、1940〜90年代にウェグナーが製作した家具を、10年ごとにカーペットでゾーニングしながら展示し、「リデザイン」を基本としたウェグナーの「デザインの系譜」を可視化している。また、家具メーカーの持つポテンシャルに応じて、ウェグナーが様々なデザイン案を提供していたことも伺え、その引き出しの多さに驚かされる。

展示風景より

 各カーペット上には、時代やメーカーごとに手がけられた家具が円を描くように配置されているため、周囲をぐるりと回りながら家具一つひとつに目を向けることをおすすめしたい。あわせて設置されている小冊子には、ポイントとなる部分がアップで示されているほか、カーペット上にはウェグナーの言葉も記されており、その哲学にも触れることができる。

展示風景より。会場の照明は呼吸をするかのように明滅しており、薄暗闇に溶け込む家具の造形や、明るさのなかで際立つ家具の造形とその影も見どころである
展示風景より、「フェリーチェア」(部分、1975)

 なお、会場外には、ウェグナーの椅子を製造販売するPPモブラー社およびカール・ハンセン&サン社の現行モデルに座れるコーナーが設けられている。実際に座ることで、展覧会を通じて知ったウェグナーのデザイン哲学を体感することができるだろう。

 椅子を中心とした優れた家具を数多く有する織田コレクションだからこそ実現可能な本展。この膨大な資料と多様な切り口を通じて、ウェグナーが築き上げたデザインの系譜を読み取り、その功績を知る貴重な機会となるだろう。

展示風景より

編集部