「舟」の中で海原を見る。《洸庭》がもたらす没入型アート体験【3/3ページ】

 外観だけでも圧巻ではあるが、パビリオンのなかで体験できるインスタレーションも必見だ。中に入れる時間は決まっており、各回25分間の体験となっている。ゆるやかなスロープをあがると、背の低い入り口がある。少しかがみながら舟の中へ入る行為は、これからはじまる体験の内的な広がりを直感的に想起させる。

《洸庭》の外観(一部)。内部に続く入り口の様子 Photo: Nobutada OMOTE | SANDWICH

 空間に入った途端、目の前には暗がりが広がる。複数名が同時に入れる空間だが、参加人数が少ない回であれば、暗さや静けさをより感じることになるだろう。やがて視界には暗がりのなかに海を感じさせる水平線のような光が映る。じつはこの舟型の建物のなかには水が張られており、舟のなかに「海」が広がる入れ子構造となっている。

《洸庭》内部のインスタレーションの様子 Photo: Nobutada OMOTE | SANDWICH

 波打つ水面に反射する光と対峙する25分間に、人は何を感じ、考えるのだろうか。人それぞれ受け取り方は異なるはずだが、その時間、体験こそが禅的なものだと言えるだろう。本インスタレーションは、ビジュアルデザインスタジオ・WOWとのコラボレーションによるものである。

 神勝寺という「禅とはなにか」を感じるための場所のなかで、改めて自己の内面と向き合う機会をつくってみてはいかがだろうか。