「舟」の中で海原を見る。《洸庭》がもたらす没入型アート体験【2/3ページ】

 舟型の建物の屋根と軒天井には、日本に古来から伝わるこけら葺きの手法が応用されており、全表面は約59万枚のサワラの板材で覆われている。素材のポテンシャルを引き出すために、材の種類や建築的な機能を減らしたワンマテリアル・ワンテクスチャーでつくられており、時間の経過にあわせ経年変化が見られる。しかしその変化によって周囲の自然と調和し、禅の精神がより感じられるようなつくりとなっている。

《洸庭》の外観(一部) Photo: Nobutada OMOTE | SANDWICH

 また本作までは、神勝寺の入り口側から橋を渡ってたどり着くことができるが、この橋を渡る途中から作品の鑑賞体験ははじまっている。橋の先に広がる日本庭園の風景が、《洸庭》の軒下と柱によってパノラマ写真のようにフレーミングされる様子も見逃さないようにしてほしい。

《洸庭》に続く橋の様子 Photo: Nobutada OMOTE | SANDWICH