ディーター・ラムス(1932〜)は、ブラウン社で数々の名作を生み出したインダストリアルデザイナーであり、2025年に世界デザイン賞を受賞したことでも注目される。本展では、ラムスの思想の核である「Less, but better(より少なく、しかしより良く)」と、「良いデザインの10ヶ条」に焦点を当てる。


川上は会見で、本展のラムス展示について「プロダクトの背面まで見える構成」にしたと語った。製品の正面だけでなく、背面の構造や内部の設計まで美しく造り込む姿勢こそ、ラムスのデザイン哲学の核心だという。

ラジオ・レコードプレーヤー複合機「SK 4」や電卓「ET 66」などの代表作を通して、ラムスの「本質だけを残す」思想がどのようにかたちになっているのかを体感できる展示となっている。

展覧会の締めくくりには、6名の言葉が空間全体に散りばめられ、来場者自身に問いを返すような構成が続く。「自分の頭で考えること」「好奇心を失わないこと」などのメッセージは、変化の大きい現代社会においてもなお普遍的であり、多くの来場者の足を止めるだろう。
社会が大きな変化のなかにあるいま、あらゆる分野でデザインが担う役割は深まりつつある。21_21 DESIGN SIGHT「デザインの先生」展は、歴史的巨匠の活動を振り返りながら、未来の社会に向けて「どのような問いを投げかけるべきか」を考えるための重要な機会となるはずだ。



















