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10月1日は「デザインの日」。これからの「デザイン」に求められることは?

10月1日は「デザインの日」であるのをご存知だろうか? これは1959年の同日に通商産業省(現・経済産業省)によって定められたもので、デザインの社会への一層の浸透を効果的に図ることを目的としたものだ。そして現在、デザイン業界を取り巻く環境は大きく変化している。これからのデザインに求められるものは何か? デザイン史研究家の野見山桜による提言を掲載する。

文=野見山桜(デザイン史研究)

「デザインの日」ポスター 経済産業省ウェブサイトより(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/human-design/logo.html)

広がる「デザイン」の役割

 昨年10月に東京で世界デザイン会議が開催され、世界各国の有識者が未来に向けてデザインのあるべき姿を語りあった。じつは「デザインの日」の制定には、35年前に開催された世界デザイン会議が少なからず関係している。1989年は、国をあげての「デザインイヤー」で、90年代への突入を目前に、日本各地でデザイナー、地方自治体、経済団体、企業などが、それぞれの立場からデザインを考える機会を設けようと活動を繰り広げた。400を超える事業が登録され、参加総人数は2200万人にのぼった。この成功が、翌90年の「デザインの日」制定へとつながる。デザインが社会に浸透することを促そうと、デザイン関連のイベントや事業の集中的な実施を期待してのことだった。デザインイヤーの目玉イベント、世界デザイン会議の開催地となった名古屋は、この年に「デザイン都市宣言」をし「世界デザイン博覧会」を主催、その存在感を発揮するようになった。90年といえば、バブル景気最後の年。この時代特有の高揚感と共鳴して、デザインという言葉は軽やかに世のなかに広がっていった。その勢いとともに開設されたのが国際デザインセンターだ。日本におけるデザイン振興の歴史は、50年代に始まり、高度経済成長期を経て、デザインイヤーで到達点を迎えた。

 ところが、昨年の12月、東京での世界デザイン会議の余韻がまだ残る頃、名古屋市が国際デザインセンターの解散を提案したというニュースが飛び込んできた。日本のデザイン振興のマイルストーンとも言える存在が存続の危機にあることを知り、一区切りついたように感じた。決してデザイン振興が減速していると言いたいのではない。むしろデザインは、世界を覆い、わたしたちの生活に広がった。だからこそ、今度はその奥にある目には見えない領域を探求する段階に入ったと言える。成長期から成熟期へと移行する準備が整った状態だ。デザインが広義にとらえられるようになり、地域の仕組みづくりや人々の営みまでその言葉が包含するところとなった。表層的なものから深層的なものまで、デザインが背負うものは確実に大きくなっている。

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