「デザインの先生」(21_21 DESIGN SIGHT)開幕レポート。6人の「先生」の思想を通じてデザインの原点をたどる【5/6ページ】

 オトル・アイヒャー(1922〜1991)は、20世紀ドイツを代表するグラフィックデザイナーであり、ピクトグラムや企業CIの体系化に大きく貢献した人物だ。1972年ミュンヘン五輪のビジュアル・アイデンティティは、いまなお国際的評価を得ている。

オトル・アイヒャーセクションの展示風景より

 本展が紹介するアイヒャーの重要な側面のひとつは、「伝達としてのデザイン」という姿勢だ。コミュニケーションのあり方が急速に変化する現代において、「誰に」「何を」「どのように」伝えるのかという本質的な問いと向き合い続けたアイヒャーの仕事は、今日の情報環境においても示唆に富む。

 また彼が晩年、生活と仕事の拠点とした南ドイツの小都市イズニー・イム・アルゴイは、アイヒャーの思想を体現した場所として取り上げられる。自然環境に寄り添う暮らしのなかから生まれたピクトグラム群や、地域のアイデンティティを確立するためのデザインは、「生活とデザインの不可分性」を雄弁に物語る。本展では、未公開映像を含む貴重なビジュアル資料が菱川勢一による映像インスタレーションで紹介され、アイヒャーの柔軟な思考と人間性に触れられる構成となっている。

編集部