「デザインの先生」(21_21 DESIGN SIGHT)開幕レポート。6人の「先生」の思想を通じてデザインの原点をたどる【3/6ページ】

 アキッレ・カスティリオーニ(1918〜2002)は「タッチア」「アルコ」など照明デザインの名作で広く知られるが、田代は彼の本質を「器具ではなく、光そのものから発想したデザイナー」と評する。光の使い手を想像しながら、どのように届けるべきかを徹底的に探究した人物だ。

アキッレ・カスティリオーニセクションの展示風景より

 好奇心旺盛な彼は、日用品から工業部品まで多様なオブジェを収集し、独自の観察眼で「モノの言葉を読み取った」と田代は説明する。本展では、その収集品の一部および写真資料を展示し、カスティリオーニの思考プロセスに触れられる構成となっている。

アキッレ・カスティリオーニセクションの展示風景より

 エンツォ・マーリ(1932〜2020)は、社会への強い怒りと倫理観を生涯失わず、2000点以上のプロジェクトを生み出した人物である。「美しい造形が背景を考えずに消費されること」に強い疑問を投げかけ、「形態の背後にあるものを読み取れ」と繰り返し訴え続けた。

エンツォ・マーリセクションの展示風景より

 展示室には、彼の思想を象徴する言葉が数多くちりばめられている。ダネーゼ社との協働、晩年に日本企業と取り組んだ家具やプロダクトなども紹介され、マーリの哲学がたんなる造形を超えて、社会や生活そのものへ向けられていたことが強調される。

エンツォ・マーリセクションの展示風景より
エンツォ・マーリセクションの展示風景より

編集部