残りの3名、ドイツとスイスを中心に活動したマックス・ビル、オトル・アイヒャー、ディーター・ラムスは、いずれも戦後ヨーロッパのデザイン思想を形成した中心人物であり、6名のなかでもとくに教育・制度・社会基盤の構築に深く関わったデザイナーたちだ。
マックス・ビル(1908〜1994)は、20世紀を代表するスイスの建築家・芸術家であり、オトル・アイヒャーとともにウルム造形大学を創設したことで知られる。建築、彫刻、プロダクト、タイポグラフィ、教育と幅広い分野で活動したが、その根底には「数学的思考に基づく構造への洞察」と「生活文化をつくるデザイン」という理念がある。

ビルは、建築や製品のデザインにとどまらず、「環境形成」という広いビジョンを掲げた。生活文化や日常文化そのものをつくる行為としてデザインをとらえる姿勢は、現在のデザイン教育にも強く通じる。
ビルが設計したウルム造形大学の写真資料や、「ウルム・スツール(ウルマー・ホッカー)」「ユンハンスの時計」など、彼の理念が結晶したプロダクトを紹介。向井周太郎が留学時に撮影した未公開写真は、本展の大きな見どころのひとつだ。




















