「ドイツ工作連盟」と「規格化による社会のデザイン」──美しさの規格化は社会や教育に何をもたらしたのか?

「デザイン史」の視点から現代における様々なトピックスを考える連載企画「『デザイン史』と歩く現代社会」。テーマごとに異なる執筆者が担当し、多様なデザインの視点から社会をとらえることを試みる。第5回は、コグニティブデザイナー、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科准教授の菅俊一が、20世紀初頭に設立された「ドイツ工作連盟」を例に、規格化が社会や教育にもたらした影響について論じる。

文=菅俊一(コグニティブデザイナー、多摩美術大学美術学部統合デザイン学科 准教授)

ペーター・ベーレンス 電気湯沸器 AEG社 3種類のサイズのモデル(1.25、1.0、0.75) 引用(https://bg.wikipedia.org/wiki/%D0%9F%D0%B5%D1%82%D0%B5%D1%80_%D0%91%D0%B5%D1%80%D0%B5%D0%BD%D1%81)

私たちの生活のなかにある規格化

 私たちの生活を見回してみると、そこは様々な規格化されたものであふれています。例えば、プリンターなどで普段使用されているコピー用紙の大きさはA4などと呼ばれており、国際規格(呼称はA列210×297サイズ)になっているサイズです。そのため、A4用紙が使えるとされているプリンターやコピー機には、どのメーカーが生産しているものだとしても使用することができます。規格が定められ、守られることによって互換性が担保されているわけです。

 また、この文章が読めているのはWebブラウザを介したインターネット通信に支えられているからであるわけですが、この通信に関してもHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)という通信プロトコル(情報をやりとりするためのルール)が決められているからこそ、様々なデバイスや環境からアクセスできるのです。

 ほかにも、スーパーや八百屋に並んでいる野菜や果物といった農産物にも、JAS(日本農林規格)と呼ばれている規格があり、一定の品質(色や形、大きさ、成分など)によって等級が定められています。これによって様々なばらつきが起きやすい農産物の質を担保し、価格を安定させることにつながっています。

 これはあくまでほんの一例にすぎませんが、生活のなかにある大量生産されている製品などは、基本的になんらかの規格に基づいて生産され、私たちのもとに届いています。あらゆるものが産業化される過程で、効率と質の両面を担保するべく規格がつくられ運用されているため、社会自体が規格によってデザインされているとも言えます。

 このように、様々な産業において、それを支えるための規格化という考え方が重要視されているわけですが、この規格化の考え方を、かつて新しい芸術の在り方として取り入れようという動きがありました。それが、今回取り上げる「ドイツ工作連盟」です。

規格化における美の質を探求した「ドイツ工作連盟」