瓦を通じて被災地の現状や文化背景を伝える企画展も
現在、珠洲市には地域住民のほか、復興に従事する解体業者なども出入りしているようだ。そうした人々の交流の場でもある現地の銭湯「あみだ湯」では、瓦を通じて被災地の現状や文化背景を伝える企画展「アウトサイド」(~12月16日)が開催されている。



同展の企画を担当するのは、元国立工芸館特定研究員の石川嵩紘だ。展覧会名の「アウトサイド」には、小松市を拠点とする瓦バンクと、金沢市に住む石川がともに被災者ではなく、あくまで「外部」の立場から震災と向き合っていること、珠洲市が石川県の北端に位置すること、そして瓦という素材が屋外で用いられ、人々の暮らしや地域の景観をかたちづくってきたこと、という複数のニュアンスが込められている。
出展作家には、被災地を訪れ、それぞれの立場から能登と関わってきた山本基、七尾旅人、仮( )-かりかっこ-、宮崎竜成、大和楓、池田杏莉といった6名の作家が名を連ねる。作家たちは能登瓦や地域の文化をリサーチし、ジャーナリスティックな視点を踏まえながら、銭湯の利用者に“能登地方で築かれてきた文化や産業の歴史を発見してもらう”ことに重きを置いた表現を展開している。
企画・キュレーションを担当した石川は次のように語る。「被災建物の公費解体は、今年11月に目処がつく見込みだと石川県は発表しています。解体作業が終わった後には何が残るのでしょうか? “アウトサイド”とタイトルにあるように、我々は当事者になり得ません。残念ながら、東日本大震災のときに比べ、能登半島地震に対する人々の関心の薄さも感じられます。それでも、アウトサイドな立場であっても、アートと地域を接続させながら、能登にあった文化を瓦を通じて伝えられたらと考えています」。


シンガーソングライターの七尾は、倒壊した建物から回収された能登瓦に、新作の詩「呼び声」を釉薬で記し、焼成した作品を発表している。静かでありながら、生々しい七尾の想いが伝わってくる




現地で滞在制作中の宮崎は、被災し再利用ができなくなった瓦に日記と絵を描き、その過程を映像で記録。描き終えた瓦は、ハンマーで粉砕し、顔料として用いてキャンバスに能登の家並みを描いている



















