社員食堂で展開されている作品は、米澤とクロキならびにこの土地との対話を感じさせるものが多い。米澤は長期間におよぶレジデンスにおいて、クロキで働く社員とコミュニケーションをし、そのイメージの総体とでもいうべきキャラクター「クロキちゃん」をつくりあげた。会場では、このキャラクターをモチーフにした米澤のドローイングを原画として、コンピュターミシンでキャンバスに刺繍をした平面作品が展示されている。糸の重なりによって立体的に表現されたイメージの連なりが本作からは体感できる。

キャラクターを介して展開される作品について、米澤は次のように語った。「最初はキャラクターをつくる予定はありませんでした。でも、クロキのことをもっと知るため、制作を通じてコミュニケーションをしたいと考えたとき、その手段としてキャラクターをデザインすることを思い立ちました。たんに似顔絵をつくるということではなく、実際に話したときに私が感じたその人の印象や精神性が立ち現れるように、自分の経験を土台につくりあげたキャラクターです」。


展示が行われている食堂には、社員たちのバーベキューの写真や額縁に入った表彰状といった、会社の歴史が感じられるものが並ぶが、そこには写真とドローイングを組み合わせた米澤の作品も混じり合う。米澤が近隣で撮影された写真に「オバケ」のスクリーンショットを重ねたこの作品群は、この場所で紡がれた米澤の個人的な営みが照射されている。

床に置かれた作品《魂を紡ぐ詩》は、ふたつのデニム生地を糸でつなぐように縫い合わせ、そこにふたりの人物の横顔と円環を感じさせる詩を添えた。機械に委ねた織りと刺繍が生み出した偶然性が、デニムに生の質感を与えていた。




















