今回のレジデンスで米澤が制作した新作群「光の傷」は、9月9日にプレビュー、10日に地元市民に向けて公開された。これらの作品は10月に、パリで展覧会として発表される予定だ。今回のレジデンスで米澤は、デニム生地そのものを「宇宙」としてとらえ、生地に対する加工を「光の傷」として、様々なメディウムによって表現したという。まずはクロキの本社工場のなかで展開されている展覧会をレポートしたい。

天井から吊り下げられた大型の作品《デニムのオバケ》は、デニム生地を人型にカットしたうえで、顔や米澤が作品に取り入れてきたアニメの残像表現「オバケ」をレーザー彫刻している。垂れ下がった生地は床に溶けだすように演出されており、オバケが立ち現れる、あるいは溶けて流れ出ていったかのようにも感じられる。


壁面にもデニム地をキャンバスのように使用した平面作品が並ぶ。木型に張られたデニム地には、米澤が制作した1分間のアニメーションで使用された、8〜10枚のドローイングがレーザーによって重ねて彫刻されており、その瞬間にあったであろう動きと時間が定着されている。

会場に並んだ作品からは、デニム生地の制作過程を丹念にリサーチし、要素を分解しながら素材や工程一つひとつと向き合った痕跡が感じられる。米澤は制作の工程について次のように語った。「無数にある生地のサンプルを実際に手で触りながら、着色するにはどのような画材が適しているのか、表現したい世界観のためにはどれくらいの厚さが適しているのかを考えました。また、削る、洗うといった加工の工程や、ケミカルウォッシュの濃度なども教えてもらい、デニムという素材の特性を体験しながら理解していきました」。

また、展示されている室内では、音響作品《みんなの歌が届くといいな》が上演されている。これは展示空間の隣で絶え間なく響き続ける織機の音を、米澤がボーカロイドソフトを利用しながら再編集したものだ。デニムに携わる社員、そして機械の声が、生地を紡ぐように連続する演出が行われている。



















