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「新収蔵作品展」「コレクション+ 女性アーティスト、それぞれの世界」(アーツ前橋)会場レポート。収蔵品のポテンシャルを再考する【2/6ページ】

若手作家から物故作家まで。「新収蔵作品展」

 まず「新収蔵作品展」の前半では、90年代〜2000年代生まれの作家、道又蒼彩(みちまた・あおい)、森本啓太、木津本麗(きづもと・れい)の作品を展示。また、「アーツ前橋10周年記念展 ニューホライズン 歴史から未来へ」(2023)で展示されたニューヨーク在住の松山智一の作品もある。

 道又の寓話的な木版画は「カフカの階段」シリーズの2点。その名は、作家・社会運動家、生田武志の論考「カフカの階段」に因む。貧困を自己責任ではなく社会構造の問題と説く生田は、フランツ・カフカの小説『父への手紙』の一節から着想し、「貧困になるプロセスは階段を一段一段降りていくようなものだが、階段を上ろうとするとそこは壁になっていて元の高さに戻れない」とした。と同時に、壁に「段差をつくる」(段階的に支援する)セーフティネットのあり方も提唱する。そこから道又は若い世代の生きづらさなどになぞらえ、再解釈して描いている。筆者には「コレクション+ 女性アーティスト、それぞれの世界」の「第4章 ケア」への序章とも受け取れた。

展示風景より、右から森本啓太《Unspoken Sentiments》(2023)、松山智一《Turn Up Remember》(2021)、木津本麗《お庭で遊ぶ》(2023)、すべて2023(令和5)年度寄贈 撮影=白坂由里
展示風景より、右から道又蒼彩《idleness》(2023)、《duration》(2023)、すべて2023(令和5)年度寄贈 撮影=白坂由里

編集部