アーツ前橋が収蔵を視野に借用していた2作家の作品を紛失した問題について、市が2作家の遺族に計400万円の賠償金を支払うことで和解が成立した。
アーツ前橋は収蔵を視野に入れた作品調査の過程で、借用した6作品を紛失したことを2020年11月に公表。本来保管場所として想定されていなかった旧中学校のパソコン室に保管していた6作品を紛失したことが、2020年1月から2月にかけて確認されていた。なお、問題発覚の時点で退任が決まっていた当時の住友文彦館長は、同年3月末に退任した。
賠償金額の400万円は、専門家による評価額により算出されたもの。今年2月に市議会で開催された市民経済常任委員会において賠償金の支払いによって和解する方針が提示され、3月14日に開催された市議会第1回定例会における総括質問にて、全会一致で議決された。
なお、作品については盗難された可能性が高いとされている。市は21年12月に前橋署に被害届を提出しており、現在も捜査中だ。
ほかにもアーツ前橋は、2019年にアーティスト・山本高之の個展を開催したものの、業務委託料に含まれていた記録集の作成が中断し、委託料の一部が支払われなかったという問題を抱えていた。本件について損害賠償請求を起こした山本に、市は80万円を賠償金として支払うことを昨年決めている。
賠償金の支払いというかたちでふたつの問題にひとまずの決着をつけたアーツ前橋。しかし同館の専門職館長はいまも空席のままだ。市は昨年8〜9月にかけて前館長の後任となる専門職館長の「特別館長」を公募したが、審査の結果採用者がいなかったと発表。その後、市の文化芸術戦略顧問として森美術館特別顧問である南條史生が4月1日に就任することが発表されており、3月7日時点で市は南條が特別館長として就任する可能性にも言及している。