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パープルームはなぜギャラリーをダイエー海老名店に出店するのか。梅津庸一に聞く【2/4ページ】

なぜ、ダイエー海老名店なのか

 パープルームは、かつて海老名より相模川沿いに北上した相模原駅と上溝駅の中間地点で約10年活動を続けており、ギャラリーも同所で運営してきた。しかし、2024年に建物の老朽化によって立ち退くこととなり、その後、立川の物件で活動の継続を模索していたが、こちらも立地の問題により断念することになる。そのパープルームが、なぜ海老名の、しかもダイエーに店舗を構えることになったのか。その経緯について梅津は次のように語った。

梅津庸一 撮影=編集部

 「現在のアート界は、マーケット、ギャラリー、美術館、キュレーターやプロデューサー、芸術祭など、いずれもがポジショントークありきの固着した状態で、同じところをずっと巡回しているように思えます。私自身、そういったところで戦い続ける疲れから、陶芸を始めたという経緯もありましたが、もちろん陶芸にも同様の構造が存在しています。そういった状況に、アーティストとして飽きや疲れを感じていたのは事実です。海老名は陶芸窯や陶芸用品を扱うシンリュウさんが近隣にあることもあり、こちらのダイエーも含めて度々訪れる場所でした。あるとき、たまたまダイエーに立ち寄ったら、空きテナントに募集の告知があったので『ここだ!』とピンときて、応募をしてみることにしたんです。アートとは直接的な関連性の薄いこの場所でなら刺激も多く、飽きずにやっていける。直感ですが、そんな気がしました」。

ダイエー海老名店の2階専門店フロア 撮影=編集部

 ショッピングセンターという、既存のアートとは縁遠い場所にギャラリーをオープンさせるうえでは、ルールや価値観の相違ゆえに苦労する場面も多いのではないだろうか。梅津は次のように語る。

 「『アートで街を振興しよう』といったプロジェクトの一貫としてやっているわけではなく、純粋なひとつのテナントとして出店しています。行政や団体の支援などはいっさいありません。審査には時間を要しましたし、利益を追求しないギャラリーを店舗として運営する、というコンセプトを説明するのも苦労しました。施工や店舗デザインに関しても、アートとは無縁の場所で展開するがゆえに、様々な折衝が発生しています。これは、おそらくオープン後も続いていくことでしょう。しかし、こういった折衝こそが、本当の意味で街にアートを存在させるために必要なことなのではないでしょうか」。

作品搬入の様子 提供=パープルーム