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いま改めて問う、美術は戦争をどう描いてきたか──「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」(東京国立近代美術館)
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 最後の展示室は「8章 記録をひらく」に充てられた。東京国立近代美術館に所蔵されている戦争記録画が、無期限貸与というかたちで「返還」された1970年前後、戦争表現がどう受け止められ、その後いかに受容・活用されてきたかを、様々な資料を並べ検証している。

 同室の壁には作戦記録画のひとつ、向井潤吉《マユ山壁を衝く》(1944)が架かる。画面内では兵士が主役というより、克明に描写された熱帯の植物群に焦点が当たっている。向井は戦後に全国を旅するようになり、消えゆく民家を記録することに生涯取り組んだ。のちの表現の萌芽が、作戦記録画のなかにも見てとれる。《マユ山壁を衝く》の傍には、同じく向井潤吉の民家シリーズの一枚《飛騨立秋》(1962)も出品されており、画業の戦中戦後の連続性と断絶継続性を確認することができる。

展示風景より、中央が向井潤吉《マユ山壁を衝く》(1944)
撮影=木奥惠三

 向井をはじめここまで見てきた美術家たちは、自身が生まれ落ちた時代のなかにあって、ひたすらその時代を見つめ、描き出すことをしてきた。これはどの時代の表現者もそうだったし、先の戦前戦中戦後を生きた美術家ももちろん例外ではなかった。そんな当たり前の事実を、会場に身を置いていると改めて気付かされる。

編集部