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「葛飾北斎 冨嶽三十六景」展(太田記念美術館)開幕レポート。“地形”で読み解く北斎の富士【2/3ページ】

 展覧会の冒頭では、《神奈川沖浪裏》《凱風快晴》《山下白雨》といった「三役」が紹介される。荒れ狂う波と静謐な富士の対比が印象的な「浪裏」、朝焼けに染まる「赤富士」、稲妻を背にした「黒富士」など、誰もが知る名画が並び、それぞれに北斎ならではの視点と構図の妙が込められている。

《神奈川沖浪裏》《凱風快晴》《山下白雨》の展示風景より

 「冨嶽三十六景」には、実在の地形に基づいた風景が数多く見られ、とくに高低差のある場所から富士を望む構図がしばしば採用されている。例えば第2章「高低差と富士」で紹介される《東海道品川御殿山ノ不二》では、淀橋台地の端に位置する品川・御殿山から富士山が描かれているが、実際の方角からはそのようには見えない。それでも画面中央に堂々と富士山が描かれていることから、「あえて絵の演出として富士をとらえた」と渡邉は語る。現実には存在しない風景であっても、ユーモアを込めて見る人の想像力を刺激することが、北斎の魅力のひとつだという。

展示風景より、右は《東海道品川御殿山ノ不二》