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「書斎を彩る名品たち 文房四宝の美」(永青文庫)開幕レポート。いまも昔も変わらない文具を愛でる楽しみ【6/6ページ】

特集展示:喫煙具

 いまや習慣として否定されつつある喫煙も、思索の一助として知識人の嗜みだった。江戸時代にきざみ煙草の喫煙が一般化すると、携帯できる煙草入れや用具一式を入れる煙草盆がつくられるようになる。使用者の知識やセンスを代表して、意匠を凝らし、素材にこだわり、装飾に腐心したものが生み出された。ここにも用具をそれ以上の文化にする感性が生きている。

「煙草入れと煙草盆」展示風景より、《舞楽蒔絵煙草盆》(19世紀、江戸~明治時代)永青文庫蔵
「煙草入れと煙草盆」展示風景より、左から《相良繍腰差し煙草入れ》、《花文腰差し煙草入れ》(ともに19世紀、明治時代)いずれも永青文庫蔵

 いずれも紀元前からの歴史を持ち、中国文化を支えてきた文具たち。それを愛でる美意識「文房四宝」は、愛玩性とともに、究極の硯で銘墨をすり、逸品の筆で上質な紙に書く/描くというこのうえなく贅沢な「使用の可能性」を持つ。その余裕と風雅こそが、知識人を魅了したのだろう。

 キーボードで文字を起こす、あるいはタッチパネルで描くことが普及し、効率と機能性が重視される現代において「筆墨硯紙」は遠いものになりつつある。しかし、現代の文具ブームにおいても人々が求めるものには、「筆墨硯紙」と何かしら通じるところがあるはず。いま一度、書く/描くことが持つ豊かな文化に向き合ってみたい。