筆
文房四宝でもっとも長い歴史を持つ筆は、殷時代(紀元前16~11世紀)の「聿(いつ)」に始まり、戦国時代の遺跡からは兎毛と竹軸の「無芯筆」が出土している。漢時代には芯となる毛に紙を巻き、さらに毛を巻いた「有芯筆」もつくられたようで、これは日本にも伝わり、正倉院に残っている。その後は中国と日本の両国で素材や構造が変化していく。筆の毛には、兎、馬、鼬(いたち)、鹿、山羊など様々な素材が見られ、軸(筆管)は、黒檀や陶磁のほか、象牙、玉(ぎょく)といった高級な素材を使ったものもつくられるようになった。朱漆を何十層にも重ねてそれを彫刻する堆朱(ついしゅ)や「寿」の文字を表すなどの装飾も見られる。筆を立てるための筒には、文人趣味らしく、賢人や故事にもとづいた精緻な図が彫られているので、その技も楽しみたい。


各展示の間には、掌におさまるほどの置物たちがちんまりと座している。ユニークでかわいらしい姿ながら、その素材は紫水晶や玉などの高級品。とくに用途はなく、書斎机や棚を飾っていた贅沢な「フィギュア」を飾る愉楽は、ちょっとうらやましくなる。




















