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「書斎を彩る名品たち 文房四宝の美」(永青文庫)開幕レポート。いまも昔も変わらない文具を愛でる楽しみ【4/6ページ】

 文房四宝でもっとも長い歴史を持つ筆は、殷時代(紀元前16~11世紀)の「聿(いつ)」に始まり、戦国時代の遺跡からは兎毛と竹軸の「無芯筆」が出土している。漢時代には芯となる毛に紙を巻き、さらに毛を巻いた「有芯筆」もつくられたようで、これは日本にも伝わり、正倉院に残っている。その後は中国と日本の両国で素材や構造が変化していく。筆の毛には、兎、馬、鼬(いたち)、鹿、山羊など様々な素材が見られ、軸(筆管)は、黒檀や陶磁のほか、象牙、玉(ぎょく)といった高級な素材を使ったものもつくられるようになった。朱漆を何十層にも重ねてそれを彫刻する堆朱(ついしゅ)や「寿」の文字を表すなどの装飾も見られる。筆を立てるための筒には、文人趣味らしく、賢人や故事にもとづいた精緻な図が彫られているので、その技も楽しみたい。

「筆」展示風景より
「筆」展示風景より、《百寿文軸筆》(18世紀、清時代)永青文庫蔵。象牙や黒檀などの多様な素材の軸には様々な字体の「寿」の字が表される。犬養毅旧蔵のセット

 各展示の間には、掌におさまるほどの置物たちがちんまりと座している。ユニークでかわいらしい姿ながら、その素材は紫水晶や玉などの高級品。とくに用途はなく、書斎机や棚を飾っていた贅沢な「フィギュア」を飾る愉楽は、ちょっとうらやましくなる。

「筆」展示風景より、掌に収まる小さな置物たち