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「書斎を彩る名品たち 文房四宝の美」(永青文庫)開幕レポート。いまも昔も変わらない文具を愛でる楽しみ【5/6ページ】

 中国最古の紙は、前漢初期(紀元前2世紀ごろ)の墓から出土し、原料は麻だったという。後漢中期(1世紀)に、宦官・蔡倫(さいりん)が製紙法を改良し、楮(こうぞ)なども使用されるようになったようだ。晋時代(265~420)には竹や木に代わり、紙が公文書に採用される。その後はさまざまな素材が用いられ、加工技術も向上して、装飾をほどこした高級紙も生み出されていく。日本では、こうした唐紙に加えて雁皮(がんぴ)や三椏(みつまた)でもつくられ、独自の料紙文化が花開く。

「紙」 展示風景より、《乾隆年仿澄心堂紙》(18世紀、清時代)永青文庫蔵。上から字を書くのがもったいないほど美しい紙
「紙」展示風景より、《乾隆詩箋》(18世紀、清時代)永青文庫蔵。五爪の龍が描かれた黒漆塗りの箱に絵入りの紙は9種、95枚が収まる

 ここでは清時代に宮廷向けに作られた美しい紙とともに、そこに捺す「印」の造作にも注目する。“はんこ”と言うのもはばかられるほどの超絶技巧は、趣味を超えた芸術品だ。

「紙」展示風景より、河井荃蘆《細川護立所用印》(1916[大正5年])永青文庫蔵
「紙」展示より、趙従周《赤壁夜遊図牙彫》(19~20世紀、清時代)永青文庫蔵。わずか7×1.5センチメートルの象牙に描かれた絵もみごとだが、裏面の極小文字に驚嘆