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「書斎を彩る名品たち 文房四宝の美」(永青文庫)開幕レポート。いまも昔も変わらない文具を愛でる楽しみ【3/6ページ】

 墨は、紀元前316年の竹簡にその文字が見られ、戦国期(紀元前8~3世紀)の墓から小塊が出土している。硯との相性が重要な墨は、相互的に変化・改良が進んだようだ。後漢時代には手で持てる墨が現れ、明清時代(14~20世紀)には後世に残る名墨を生み出す墨匠たちが登場する。素材は松を燃やした煤を原料とする「松煙墨(しょうえんぼく)」が中心だったが、時代が下ると植物油からとる「油煙墨(ゆえんぼく)」なども併用されるようになる。

 墨は当然、使うとなくなるので、現在残るものには使いかけも多い。しかし、永青文庫のコレクションには未使用のものが揃っているのも見どころのひとつだ。これが墨? と驚く造形のものから、乾隆帝の詩と楼閣山水図を刻んだ豪華なセットまで見ごたえ十分。墨の香りを想像しながら鑑賞したいところだ。

「墨」展示風景より、左から《如意墨》(清時代、1685[康煕24年])、《乾隆年製 御製詠墨詩墨》(清時代、1736~95[乾隆年間])ともに永青文庫蔵
「墨」展示風景より、《壽墨(富岡鉄斎古稀記念墨)》(1905[明治38年])永青文庫蔵。鉄斎筆の添え文とともに展示されている