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「書斎を彩る名品たち 文房四宝の美」(永青文庫)開幕レポート。いまも昔も変わらない文具を愛でる楽しみ【2/6ページ】

 硯

 硯(すずり)の原初としては、秦時代初期(紀元前3世紀ころ)の墓から、石製で板状の「研(硯)」が出土し、墨をすり潰すための石も確認されている。やがてそれらが直接墨をする「硯」へと変化したが、当時の素材は陶磁だったらしい。形は丸型だったものが、唐時代(618~907)から矩形へと移行していく。素材についても、漢時代(紀元前3~紀元後3世紀)を経て良質な石の生産・開発が進み、宋時代(960~1279)にはふたたび石製になり、現在の私たちが硯としてイメージするものに定着したようだ。清時代には精緻な彫刻や漢詩などが刻まれた装飾的なものも生み出される。鑑賞のポイントは、石質、石紋、装飾や由来、そして磨った墨の濃淡や光沢を見る発墨(はつぼく)だそうだ。

「硯」展示風景より、手前が硯の最高峰とされる、石の産地広東省の渓谷の名で呼ばれる端渓硯
「硯」展示風景より、《宋洮河緑石硯》永青文庫蔵。硯面には精緻な龍の彫刻がほどこされた逸品

 また、様々な硯とともに、硯に塵が入るのを防ぎ、室内装飾ともなった硯屏や、墨に水を加える水滴、書く前に筆先を整えるための水を入れる筆覘(ひってん)、これらの道具を収める函などの道具にも、豪華な素材や趣向あふれる造りが奢られており圧倒される。

「硯」展示風景より、硯屏と座屏
「硯」展示風景より、《乾隆御製書硯屏》(18世紀、清時代)永青文庫蔵。紫檀の枠にはめられた玉に『春秋』の解釈と五爪の龍が彫られている
「硯」展示風景より、いずれも豪華な造りの硯箱や提箪笥
「硯」展示風景より、《花卉人物堆朱重箱》(17世紀、清時代)永青文庫蔵。本来は重箱であったものを日本で硯箱に仕立てたとされる。全面の精緻な彫りが圧倒的
「硯」展示風景より、《書笥》(18~19世紀、清時代)永青文庫蔵。書籍を入れる箱が本と巻物の形をした物入になっている