後半の起点となるセクション5は、2025年大阪・関西万博のシンボルとして注目される《大屋根リング》を中心に構成されている。藤本が会場デザインプロデューサーとして手がけたこの建築は、世界最大級の木造構造物であり、「開かれた円環」というコンセプトのもと、求心性と拡散性、個と全体、分断と連携といった相反する価値を包み込む象徴的な建築だ。

展示室には、この《大屋根リング》の一部を5分の1スケールで再現した、高さ4メートルを超える巨大模型が鎮座する。加えて、構想段階における藤本のスケッチ、設計の変遷をたどる資料や写真、そして特徴的な「貫(ぬき)」接合工法を実物大で体験できるモックアップも展示されており、建築の構造的・技術的な側面にまで踏み込んで紹介されている。



また、展示室の床面には、200分の1スケールの《大屋根リング》模型と、それに関連する図面や写真パネルも配置。さらに、このコンセプトと共鳴する《ハンガリー音楽の家》など、藤本の12の関連プロジェクトの模型もあわせて展示されており、彼の思想が一貫していることを感じさせる。

一転してセクション6では、藤本建築の代表的なプロジェクトをぬいぐるみとして擬人化したユーモラスなインスタレーション《ぬいぐるみたちの森のざわめき》が広がる。
ここでは、《ラルブル・ブラン(白い樹)》《太宰府天満宮 仮殿》など、藤本が手がけた9つの建築が、表情豊かなぬいぐるみとして登場。それぞれに「明るい」「まじめ」「話し好き」「寡黙」といったキャラクター設定がなされ、2つのグループに分かれて互いに語り合う。

会話のなかでは、設計の背景や建築の特徴、社会での評価や利用者の反応などが軽妙に語られ、建築の知識がなくても親しみを持って藤本建築にふれることができる仕掛けだ。ぬいぐるみはすべて藤本の事務所スタッフによる手づくりであり、展示室内には藤本自身のスケッチも多数展示されている。




















