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「藤本壮介の建築:原初・未来・森」(森美術館)開幕レポート。多様性を包み込み、共に生きる場所をつくる【2/4ページ】

 続くセクション「軌跡の森─年表」では、建築史家・倉方俊輔の監修のもと、藤本の活動を年表形式で振り返る。1994年の東京大学卒業から現在進行中のプロジェクトまで、藤本自身による96のプロジェクトを軸に、同時代に竣工したほかの建築家の主要作品、国内外の建築業界の動向、社会一般の出来事が重ねられており、建築家としての藤本の位置づけが視覚的に把握できる構成となっている。

 展示には、年表に加えて藤本本人のインタビュー映像や写真スライドショー、各時代における藤本の言葉も添えられており、たんなる記録を超えて、思想の変遷や時代との関係性を読み解く手がかりとなっている。

セクション2「軌跡の森─年表」の展示風景より

 「本を読む/読まない間(あわい)にある空間」として設けられたのが、セクション3「あわいの図書室」である。窓から都市風景が望める展示室に、ブックディレクター・幅允孝とともに構成されたこのスペースでは、藤本建築に着想を得た5つのテーマ──「森・自然と都市」「混沌と秩序」「大地の記憶」「重なり合う声」「未完の風景」──に基づいて選書された40冊の本が、椅子に1冊ずつ配置されている。

セクション3「あわいの図書室」の展示風景より

 椅子には本の抜粋や言葉が散りばめられ、来場者は読書に没頭することも、窓の外を眺めて過ごすこともできる。これは、藤本建築の特徴である「ある/ない」や「開く/閉じる」といった両義性を、本を読む体験に重ねた空間となっている。

 藤本建築における「人の動き」に焦点を当てたのが、第4セクション「ゆらめきの森」である。ここでは、《T house》や《UNIQLO PARK 横浜ベイサイド店》、《エコール・ポリテクニーク・ラーニングセンター》など、藤本が手がけた5つのプロジェクトの白い建築模型に、利用者や居住者の動線を示すアニメーションが投影される。

セクション4「ゆらめきの森」の展示風景より

 建築そのものを鑑賞するだけでなく、そこに生まれる人間の振る舞いや交流、時間の流れといった「建築の中の生活」を可視化しようとする試みである。椿キュレーターは「建築が人間の動きをどのように導くか」「空間がどのように関係性をつくるか」といった視点を、このセクションで体験してほしいと語る。

編集部