岡本太郎賞受賞:仲村浩一
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仲村は1999年千葉県生まれ、2024年に武蔵野美術館大学造形学部を卒業し、現在は東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻に在籍している。
受賞作となったのは《房総半島勝景奇覧/千葉海岸線砂旅行》。10歩ごとに砂を採取しながら千葉の海岸線を一周した《千葉海岸線砂旅行》と、その過程で見た景色やお土産、青木繁《海の幸》を思わせるモチーフなどを描き込んだ《房総半島勝景奇覧》がセットになった大作だ。砂浜によって異なる砂の色に興味を持った仲村は4年かけて千葉の砂浜を一周し、それが動機となり本作が生まれた。
仲村は「4年間、砂と戯れた時間が評価されて嬉しく思う。これからも砂という素材の研究は続けていきたい」と受賞の喜びを語った。
なお審査員の椹木は本作について、以下のような審査評を寄せている。「本作の勝因は、『千葉県』という『月並』と言えばあまりに月並な主題を、作者が生まれ育った故郷であったというだけに発し、4年を費やして同県の海岸線をぐるりと10歩ごとに分けて足元の砂を採取して踏破し、それをもとに『尋常でない』一大パノラマに仕立ててみせたことである。このことを通じて『千葉県』は、砂による抽象と具象に分岐し、なおかつ同一のものであるという奇妙な二重性を獲得している。『千葉県』が他に類を見ないやり方で芸術へと昇華されたのだ」。
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