2024.2.16

第27回TARO賞は岡本太郎賞につん、敏子賞に三角瞳。10組が特別賞

岡本太郎の遺志を継ぎ、次代のアーティストを顕彰する岡本太郎現代芸術賞(通称「TARO賞」)。その第27回の受賞者が発表された。

岡本太郎賞を受賞したつん。後ろは受賞作の《今日も「あなぐまち」で生きていく》
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 岡本太郎の精神を継承した岡本敏子によって創設され、毎年、自由な発想で芸術の新しい側面を切り開くアーティストを顕彰してきた「岡本太郎現代芸術賞」(通称「TARO賞」)。その第27回の受賞者が川崎市岡本太郎美術館で発表された。

 今回は、621点の応募のなかから22組が入選。入選者は以下の通り。池田武史、大河原健太、長雪恵、遅四グランプリ実行委員会、小山恭史、クレメンタイン・ナット、月光社、小山久美子、GORILLA PARK、鈴木のぞみ、ZENG HUIRU、タツルハタヤマ、 つん、野村絵梨、林楷人、フロリアン・ガデン、三角瞳、村尾かずこ、村上力、横岑竜之、横山豊蘭、李函樳。

 昨年はともに該当作品なしとなった岡本太郎賞・敏子賞だが、今年は岡本太郎賞をつんが受賞。また岡本敏子賞には三角瞳が選ばれた。審査員は椹木野衣、山下裕二、和多利浩一、平野暁臣(岡本太郎記念館館長)、土方明司(岡本太郎美術館館長)の5名が務め、つんには賞金200万円が、三角には100万円が贈られた。

岡本太郎賞受賞:つん

展示風景より、つん《今日も「あなぐまち」で生きていく》

 つんは1981年福岡県生まれ。2004年に成安造形大学を卒業。熊本をベースに活動しているアーティスト。受賞作となった《今日も「あなぐまち」で生きていく》は、ダンボールでできた団地を表現した巨大な立体作品だ。つんはこの作品について「自分らしく生きられなかった子供時代の自分が生み出したもうひとつの世界」としており、「今回の受賞で私の半生を肯定してもらった気持ち。この世界はまだまだ大きくなっていく」と語っている。

 審査員の椹木は本作について、以下のような審査評を寄せている。「『あなぐまち』とは、作者がずっとともに生きてきた『まち』の名前である。その意味で正しくは『作品』を超えたものかもしれない。しかし作者の手で作られたものであることも確かだ。作者が作った作品が、作品であることを超えて作者そのものになっていく。ここにはそう実感させるだけの現実味がある。多岐にわたる詳細な素材表記にも注目」。

展示風景より、つん《今日も「あなぐまち」で生きていく》(部分)

岡本敏子賞受賞:三角瞳

岡本敏子賞を受賞した三角瞳。後ろは受賞作の《This is a life. This is our life.》

 敏子賞の三角は1988年長野県生まれ。東京藝術大学大学院を修了。《This is a life. This is our life.》は、ポリエステルの布に無数の人の顔が刺繍されたもので、「遺伝子に束ねられた存在である」人間の姿を表すとともに、その抗えない設計図を客観的に示したものだという。

 審査員の土方は次のように評している。「三角瞳は第19回太郎賞展に入選している。その時の作品は、無数のフィギュアによるインスタレーションであった。乱雑に積み重ねられたフィギュアの洪水が、現代社会における『個』の在り方を強い圧迫感をもって問う。今回は刺繍による作品。表は人物の顔、裏は遺伝子を表す赤い糸。単なる入れ物としての肉体を暗示する。薄い布切れに刺繍された無数の『個』が折り重なるように並べられる。表現内容と新鮮な手法、展示方法がうまくかみ合い、説得力をもった作品となった」。

展示風景より、三角瞳《This is a life. This is our life.》

特別賞は異例の10組

 なお、今年の特別賞は池田武史、長雪恵、小山恭史、クレメンタイン・ナット、月光社、小山久美子、ZENG HUIRU、タツルハタヤマ、フロリアン・ガデン、村上力の10組が受賞。例年にない多数の受賞となった。全入選作品は第27回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)展として4月14日まで展示される。

展示風景より、池田武史《Space X》
展示風景より、長雪恵《きょうこのごろ》
展示風景より、小山恭史《無明》
展示風景より、クレメンタイン・ナット《POT PLANTS!》
展示風景より、月光社《MUSAKARI》
展示風景より、小山久美子《三月、常陸國にて鮟鱇を食ふ》
展示風景より、ZENG HUIRU《BACK TO ME》
展示風景より、タツルハタヤマ《小鳥のさえずりを聞くとき、遠くで銃声が鳴り響いた》
展示風景より、フロリアン・ガデン《Anomalies poétiques/詩的異常》
展示風景より、村上力《學校》