岡本太郎の精神を継承し、自由な発想で芸術の新しい側面を切り開く次代のアーティストを顕彰することを目的に毎年行われている「岡本太郎現代芸術賞」(通称「TARO賞」)。その第24回の受賞者が2月19日、川崎市岡本太郎美術館で発表された。
今回のTARO賞は、昨年の452点を大きく上回る616点の応募があり、うち24組が入選。大賞となる岡本太郎賞は大西茅布(ちふ)が、岡本敏子賞はモリソン小林が受賞した。
大西は2003年大阪府生まれの高校3年生。TARO賞受賞者としては史上最年少だ。2011年より白日会の米谷花織里に師事し、油絵を学んできた大西。現在は大阪府立港南造形高校美術科に在学しており、東京藝術大学の受験を控える。
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受賞作となった《レクイコロス》は、「レクイエム」と「コロナウイルス」を組み合わせた造語。「コロナの悲惨さのみならず、なにか運命的なものに殺された人々の、怨嗟を合唱するためにつくった作品」だという。
本作はコロナによって学校が休校になった昨年2月から半年をかけて描いた4枚の絵画をもとに、過去の作品も組み合わせることで合計55枚の絵画のインスタレーションとして構成したもの。こうした発表形態は初めてであり、審査員の山下裕二は「現時点での集大成なのだろうが、底知れない可能性を感じさせる力作」と評する。
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いっぽう敏子賞を受賞したのモリソン小林は、ふだん店舗制作や建具什器などのスチールプロダクトを中心に活動しており、商業空間などで植物をモチーフにしたアートワークを制作してきた。
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本作《break on through》では、自身初となるインスタレーション。「アートの世界は初めてで勝手がわからず戸惑った」という小林だが、そこには「これまでと違った景色を見てみたい」という思いがあり、今回の応募に至ったという。
審査員の和多利浩一は、「丁寧な細部にわたる造形技術、予想を裏切る素材感、そして増殖していく拡張性に魅力を感じ敏子賞とした」としている。金属とは思えぬ表現力に注目だ。
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なお今回の特別賞は昨年同様5組で、植竹雄二郎、牛尾篤、小野環、唐仁原希、浮遊亭骨牌が受賞。全24作家の作品が揃う「岡本太郎現代芸術賞展」は4月12日まで。会場でTARO賞ならではの熱気を感じたい。
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