「開創1150年記念 特別展 旧嵯峨御所 大覚寺 -百花繚乱 御所ゆかりの絵画-」(東京国立博物館)開幕レポート。120面超の重文障壁画を展覧【4/4ページ】

 寺内の中央に位置する宸殿は、1620年に後水尾天皇に入内した和子(東福門院)の女御御所を後に移築したものと伝えられ、内部を飾る襖絵・障子絵などの障壁画は、安土桃山~江戸時代を代表する絵師・狩野山楽(1559~1635)の代表作として重要文化財に指定されている。

 会場でも一際存在感を放つ《牡丹図》(17世紀)は宸殿のもっとも大きな部屋「牡丹の間」を飾る18面の襖絵。リズム感のあるほぼ実物大の牡丹を配置することで調和のとれた画面構成となっており、写実性と装飾性が調和した傑作と言える。

 なお本作には一部の引手金具の位置を動かした形跡などが残り、本来はどこを飾る襖絵だったか明らかではないというミステリアスな部分も残る。

展示風景より、狩野山楽《牡丹図》(17世紀)
展示風景より、狩野山楽《牡丹図》(17世紀)
展示風景より、狩野山楽《牡丹図》(17世紀、部分)

 同じく山楽の最高傑作のひとつとされる《紅白梅図》(17世紀)は、「牡丹の間」の背面にあたる「紅梅の間」南面を飾る襖絵。金地の背景に紅白二株の梅の木と水辺の風景を表しており、高い写実性と装飾性が見事に融合した作品だ。構図としては中央に紅梅、右に白梅があることから、本来はさらに左右に続く襖絵だったと考えられている。

展示風景より、狩野山楽《紅白梅図》(17世紀)

 《松鷹図》(16〜17世紀)はダイナミックな松と躍動感ある鷹が描かれた、山楽による水墨花鳥図の代表的な作品。画面を支配する松の巨木は、山楽の師・永徳による《檜図屏風》との類似性も指摘されるが、柔らかな筆使いからは山楽の個性が垣間見える。

展示風景より、狩野山楽《松鷹図》(16〜17世紀)

 大覚寺の障壁画は2016年から29年までの14ヶ年計画で修理が進められており、本展はこの修理の成果によって実現したものだ。壮麗な障壁画そのものを鑑賞しつつ、文化財修理の重要性にも思いを馳せたい。

編集部

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