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「古筆切 ―わかちあう名筆の美」(根津美術館)開幕レポート。様々なアプローチから知る名筆の楽しみ【3/5ページ】

書風の変化を楽しむ「古筆切の書風」

 能書家といっても、時代、人によってその書風は様々。この時代の古筆は、貴族文化を反映したみやびやかな書風から、武家の台頭や、和歌そのものの受容の変化などで、個性や実用性が重視される書風へと変移していく。「かなの頂点、高野切」「優美な書風と個性的な書風」「実用性を兼ねた書風へ」「筆者名がわかる切」の4つのポイントから、当代を代表する書き手たちの作品にその変化を読み取っていく。読下し文とともに書風の特徴の丁寧な解説もあるので、「読めないし、見どころがわからない」と思っている方も楽しく追えるだろう。

「2-3.古筆切の書風 実用を兼ねた書風へ」展示風景より。左から伝 西行筆《白河切(後撰和歌集 巻第八断簡)》、 重要美術品・藤原教長筆《今城切(古今和歌集 巻第十五断簡)》(ともに12世紀、根津美術館)

 注目はもちろん、本展が収蔵後初公開となる「高野切」だ。現存する最古の『古今和歌集』の書写本であり、かなの最高峰とされているもの。なかでも本作は、巻第十九に4首のみが記載される「旋頭歌(せどうか)」(五七七・五七七の6句からなる和歌の様式のひとつ)の題字を含めた全4句が揃う貴重な断簡になっている。料紙にほどこされた雲母砂子(きらすなご)がよく見える照明になっているので、そのきらめきとともに、漢字混じりのかな2首、かなだけの2首、ふたつの筆を堪能して。

「2-1.古筆切の書風 かなの頂点、高野切」展示風景より、伝 紀貫之筆《高野切》(重要文化財、11世紀、根津美術館)。収蔵後初公開

 様々な書風からは、自分の好みを探してみよう。古筆切の楽しみは広がっていくはず。また著者が判明しているものからは、書体にいにしえの人の性格や人となりを想像してみるのも一興だ。

「2-2.古筆切の書風 優美な書風と個性的な書風」展示風景より。左から藤原定信筆《石山切(貫之集下断簡)》 (12世紀、小林中氏寄贈)、伝 藤原公任筆《石山切(伊勢集断簡)》(日本・平安時代、根津美術館)

編集部