Twitterは「展覧会」だ
なぜ太田記念美術館のtweetはいつも数百の「いいね(like)」が付くのだろう? そんな素朴な疑問が、今回の取材のきっかけだ。浮世絵を専門とする私設美術館として知られる東京・原宿の太田記念美術館は、浮世絵というある種「ニッチ」な分野ながら、Twitterアカウントでは14万761(1月27日時点)ものフォロワーを誇る。
このフォロワー数は美術館界ではどれくらいの位置にあるのか。日本国内の美術館と比較してみたい。日本の美術館でもっとも多いフォロワー数を持つのは国立新美術館(26万8181)。次いで森美術館(19万676)、東京都美術館(18万4236)、山種美術館(14万8521)、横浜美術館(14万6684)となっており、太田記念美術館は6番目(数字はすべて1月27日時点)となる。
ちなみにサントリー美術館も10万4954フォロワーという数字で、こうして見ると日本美術を専門とする美術館アカウントが多くの人々にフォローされる傾向があることがわかる。
しかしここで太田記念美術館が他館と異なるのは、そのエンゲージメント(RTやLIKEなどの反応)の高さだ。同館の投稿は度々バズを起こし、ときには千単位の「いいね(like)」を獲得することも珍しくない。そのコツとはなんなのか?
歌舞伎の暫に登場する鯰坊主。タコの衣装がかなり派手なのですが、坊主頭に、鯰隈(なまずぐま)と呼ばれる顔の隈取り、さらに、もみ上げから垂れている長い毛のインパクトが強すぎて、タコの存在感が薄まっています。太田記念美術館の「和装男子」展にて展示中。いよいよ1/28(木)までです。 pic.twitter.com/rEe8MViHWJ
— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) January 24, 2021
同館では、3人の学芸員がTwitterの「中の人」を担当している。通常、こうしたSNSは広報担当者が担うことが多いが、そこには小規模館ならではの事情もある。「中の人」として中心的な役割を担う同館主席学芸員・日野原健司はこう語る。
「当館ではそもそも事務側でSNSをする余裕がない、という現実的な問題がありました。私たちがTwitterを始めた頃(2012年)は、他の美術館もたんなる情報発信にとどまっているケースが多かったのですが、当館では専門的な知識を持った学芸員が展示作品を中心に画像のアップを含めて紹介していく、というコンセプトを固めたのです。『浮世絵のここを見てもらえると楽しいよ』ということを伝えるのが一番の軸。ウケ狙いで担当者の“変な癖”を出すつもりはなく、鑑賞ポイントをあくまで客観的に、かつ学術的な間違いがないように紹介することが重要ですね」。
【和装男子・番外編】黒の着物に赤の帯を合わせる着こなしは、帯が血のように見えることから「腹切帯」と呼ばれ、通人に人気。遊びなれた大人の男性を描くのが上手い清長の作品ですが、前回展示からあまり日が経っておらず、作品保護のため出品せず。太田記念美術館「和装男子」展は1/28(木)まで。 pic.twitter.com/GvynJEobkg
— 太田記念美術館 Ota Memorial Museum of Art (@ukiyoeota) January 26, 2021
太田記念美術館のtweetを見てみると、作品の全図と部分が2〜3枚のセットで投稿されているケースが多い。そこには浮世絵の特性も関係しているという。