「HAPPYな日本美術」(山種美術館)に見る、日本美術の吉祥【2/3ページ】

 「吉祥」の代表的なモチーフは「松竹梅」だろう。横山大観と川合玉堂、竹内栖鳳が合作した《松竹梅》(1934、山種美術館)は、大観が力強い松を、玉堂が鮮やかな竹を、栖鳳が明るい色彩の梅を描いた3つの軸からなる作品だ。

 なおこの作品の隣には、山種美術館創設者・山崎種二が依頼した横山大観・川合玉堂・川端龍子による《松竹梅》(1955、山種美術館)も展示されているので見比べてみるのも面白い。

展示風景より、手前が横山大観・川合玉堂・竹内栖鳳の《松竹梅》(1934、山種美術館)。奥が横山大観・川合玉堂・川端龍子による《松竹梅》(1955、山種美術館)

 松竹梅のうち「松」を描いた作品として圧巻なのが、伏見宮家に奉献するために制作された背景を持つ下村観山の《老松白藤》(1921、山種美術館)。松に藤の花がかかる様子は和歌にも詠まれており、吉祥の画題でもある。画面に小さく描かれた熊蜂もまた出世を象徴する吉祥のモチーフだ。

展示風景より、下村観山《老松白藤》(1921、山種美術館)

 会場には人気の伊藤若冲も並ぶ。若冲といえば鶏が知られるが、鶴の作例も多い。鶴は不老不死の仙境・蓬莱山に住むとされ、長寿のシンボルだ。若冲の《鶴図》(18世紀、個人蔵)はつがいの鶴が松とともに描かれたもので、のびやかな筆致が見どころとなっている。

展示風景より、伊藤若冲《鶴図》(18世紀、個人蔵)

編集部

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