霊峰として古くから信仰の対象でもある富士山は、平安時代には蓬莱山と同一視され、吉祥の山とされてきた。横山大観はその堂々とした姿を生涯1500点以上描いたが、なかでも《心神》(1952、山種美術館)は山種美術館にゆかりの深いもの。同館の設立に際し、美術館をつくることを条件に大観から特別に購入を許された1点だ。


江戸時代から縁起物として描かれるようになったという七福神。狩野常信の《七福神》(17〜18世紀、山種美術館)は、七福神とともに吉祥の画題である唐子が描かれており、周囲には松竹梅も盛り込まれるなど、めでたさの極みといった様相だ。

第2章は、ユーモラスな表現や幸福感のある情景を主題とした作品が並ぶ。
なかでも注目したいのは、川端龍子の《百子図》(1949、大田区立龍子記念館)だろう。「百子図」は、子孫繁栄を象徴する中国由来の画題。本作は、終戦後、子供たちの嘆願によってインドから上野動物園に贈られた象のインディラを題材にしたもの。象を中心に子供たちが戯れる、平和な情景が大画面に広がる。

そのほか、猪を抱えてうれしそうな表情の《埴輪 猪を抱える猟師》(古墳時代、個人蔵)や、若冲が描いたリズミカルに布袋が並ぶ《伏見人形図》(1799、山種美術館)など、バリエーション豊かな作品が集う。





















