「豊嶋康子 発生法―天地左右の裏表」(東京都現代美術館/2023年12月9日~2024年3月10日)
初期作品から近作までの主要シリーズを網羅した、「回顧展」の看板に偽りなしの大規模個展。年代順ではなく、作品に通底するキーワードごとに作品を配した展示構成が功を奏し、豊嶋が長年かけて何を探求してきたかを鑑賞者に能動的に読み取らせる内容となっていた(鑑賞者はプレイアブルな主体として作品の読解に参入する、といったふうに)。加えて印象的だったのは、作家の試みがシリーズ単体ではなく「群」として、つまりある程度の物量をもってあらわれたときの、異様さと紙一重の説得力。作品をつくり続けること、思考を重ねること、コンセプトを貫くこと。既存のシステムにじわじわと亀裂を入れていく「長期戦」はひたすらに圧巻。