2階の展示室でもいたるところに須田の植物が配されているが、ここではなかなか見ることができないドローイングやデザインの仕事などに目を向けるのもおもしろい。
制作時に下絵を描かないという須田だが、学生時代には多くのドローイングを描いていた。見る者を引き込むその描写力は圧巻だ。また、日本デザインセンターでの勤務依頼、制作と並行して手がけてきたウイスキーやペットボトルの茶のパッケージは、誰もが見たことのあるもの。いつも目にしていたデザインが、須田の手によるものだったということを初めて知る人が大半ではないだろうか。
また、須田が近年取り組んでいる「補作」についても注目したい。欠けていた手と弓の部分を須田が補なった《随身坐像》(平安時代)は、須田が実際に手に取り細部までを研究し尽くした補作だ。須田の古物への興味と卓越した技術を感じられる展示品といえるだろう。
空間と呼応する木彫の植物とともに、美術家・須田悦弘の半生と多様な仕事にも触れることができる展覧会となっている。