まず注目したいのは油彩画だ。会場に並ぶのは、ポーラ美術館が収蔵するマティスの油彩画7点のうち5点、《紫のハーモニー》(1923)、《中国の花瓶》(1922)、《室内:二人の音楽家》(1923)、《襟巻の女》(1936)、そして《リュート》(1943)だ。いずれもマティスが生涯を通して描き続けた室内画で、ニース時代の作品となる。
とくに《リュート》は、すでにマティスが切り紙絵に取り組んでいた頃にニースのレジナ・ホテルで描かれた作品。鮮やかな赤と青と緑で構成された画面の中で繰り返される葉のモチーフ、リズミカルなドレスの模様などからは、制作の厳しさの向こうにあるマティスの描く楽しみが読み取れるだろう。